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(最高裁決定)差止仮処分事件における秘密保持命令の申立の可否
昨日、日本知的財産協会定例の研修会「特許侵害訴訟」に参加してきた。
昨日は、島田康男弁護士・弁理士による「差止仮処分」に係る講義であったが、その中で面白い話題があった。

平成16年改正の秘密保持命令(特許法105条の4)に係る最高裁決定に関する話題で、差止仮処分事件における秘密保持命令の申立の可否についてであった。この決定によって、裁判所が、仮処分というものの位置づけをどのように考えているかが垣間見れる事案とのこと。

いくつかの争点があったようだが、そのうちの一つは、「特許法105条の4第1項の「訴訟において」は仮処分手続きを含むか」という点。
秘密保持命令については刑事罰(特許法200条の2)、両罰規定(特許法201条1項)が規定されていることから、罪刑法定主義の問題があるとのこと。罪刑法定主義においては、拡張解釈は許されるものの、類推解釈は許されないからである。

原々審の東京地裁、原審の知財高裁においては、仮処分手続きにおいては秘密保持命令を発することができない旨の決定がなされたが、最高裁決定(H21.1.27)においては、原決定は破棄され、自判となり、東京地裁に差し戻された。その中で、最高裁は、特許法105条の4の趣旨を尊重し、特許法105条の4第1項の「訴訟において」は仮処分手続きを含み、よって、仮処分手続きにおいては秘密保持命令を発することができる旨の判断がなされた。すなわち、仮処分と本案とのおいて裁判所の心証の程度は同等ということが明らかとなった。

なお、本件については、東京地裁に差し戻されたが、仮処分事件が中断している間に、本案のほうについて請求認容判決がなされたため(現在、知財高裁に控訴中)、仮処分のほうは取り下げられたとのこと。

この決定のお話しに付随して、島田弁護士から面白い話しがあった。
秘密保持命令については規定が設けられた後、これまでの5年間で実際に出されたのは2件のみ(東京地裁、大阪地裁で各々1件ずつ)とのこと。刑事罰が規定されていても秘密が漏れるリスクがあり、また、命令対象の内容(範囲)と人物を特定することが困難なため裁判所は出したがらないのだという。
そこで、最近の裁判所は、秘密保持命令が必要な事態になりそうな場合には、原告・被告間にて秘密保持契約締結を勧めているとのこと。ただし、喧嘩している原告・被告間で秘密保持契約の締結はなかなかされない模様。

これに関して、島田弁護士の個人的見解としては、秘密保持命令は原告(債権者)の弁護士・弁理士だけを対象にしてもらえば(企業の技術者を命令対象に含めなくてもよい)訴訟は早く進むとのこと。ただし、現時点、企業から弁護士・弁理士の技術理解力が信用されていないと裁判所が感じているため、こうはならないのだろう、と悲観されていた。

第百五条の四  裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法 (平成五年法律第四十七号)第二条第六項 に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百五条第三項の規定により開示された書類又は第百五条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

※2項以降省略
 

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