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フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
2010/08/25/Wednesday
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 クリス・アンダーソン 小林弘人 日本放送出版協会 2009-11-21 |
仕事関係で必要なことと、自分の趣味の世界でも知っておきたいなと思い、話題の書を読んでみました。
「世界的ベストセラー『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデル」、
「〈フリーミアム〉という新しいビジネスモデルを提唱し、ビット世界の無料経済に正面から取り組んだニューヨーク・タイムズ・ベストセラー」、
ワイアード誌編集長が放つ最新作です。
以下、気になった部分を引用し、コメントしていきます。
ブログは無料で通常は広告もないが、私たちがブログを訪問するたびに何かしらの価値が交換されている。コンテンツを無料とする代わりに、私たちがそのブログを訪問したり、そこにリンクを張れば、そのブロガーの評判が上がる。ブロガーはその評判を利用して良い仕事を得たり、ネットワークを広げたり、多くの顧客を見つけたりできる。ときとしてその評判はお金に代わることもあるが、色々な方法があるので、一概に言うことはできない。
最終的には生活のためにお金に代わることになる場合もあるが、お金がすべてではない。資本主義がはびこる前に基本的であった概念がこの背後にあるように思いました。
結果は皮肉なものだった。フリーはASCAP(米国作曲家作詞家出版社協会)が恐れたように音楽ビジネスを崩壊させることなく、反対に音楽産業を巨大で儲かるビジネスに変えた。 低品質の無料バージョン(低音質でいつ曲がかかるのかわからないラジオ)は、音質のよい有料バージョンを買ってもらうためのすぐれたマーケティング手法となり、ミュージシャンの収入は演奏からレコードの著作権使用料に移った。
この考え方はあると思うのですが、高音質なものが違法・無料で流れる社会でどうするのかは課題だと思います。
いくらであっても料金を請求することで、心理的障壁が生まれ、多くの人はわざわざその壁を乗り越えようとは思わない。それに対して、フリーは決断を早めて、試してみようかと思う人を増やす。 フリーは直接の収入を放棄する代わりに、広く潜在的顧客を探してくれるのだ。
消費者からすると、安いことと無料との間には大きな差がある。 ものをタダであげれば、バイラルマーケティングになるうる。 一セントでも請求すれば、それはまったく別で、苦労して顧客をかき集めるビジネスの一つになってしまう。 つまり、無料は一つの市場を形成し、いくらであろうと有料になると別の市場になるのだ。 多くの場合で、それがすばらしい市場とダメな市場の違いになる。
有料と無料との間にはだかる壁がめちゃくちゃ大きいものですね。
要するに、アイデアとは究極の潤沢な商品で、伝達のための限界費用はゼロなのだ。アイデアが生まれると、みずから広く遠くへと伝わることを望み、触れたものすべてを潤沢にする(社会でそのように広まる考えを「ミーム」と呼ぶ)。
知的財産はこの対象ですね。
だが同じ割合でも、ウィキペディアの訪問者の一パーセントがみずから項目を書こうとすれば、それはかつてないほど貴重な情報の倉庫になる(実際は、ウィキペディアの訪問者で投稿するのは約一万人に一人にすぎない)。多ければ多いほど差が出るとは、全体が大きければ小さな割合でも大きな影響を与えられることだ。だから、多いことはいいことなのだ。
すべてにこれが通用するかと言うと疑問に思う部分もありますが、おおよそ的を得ていると思います。
無料書籍のビジネスモデルの大半は、いろいろな形のフリーミアムにもとづいている。数章分を期間限定でダウンロードできる場合でも、印刷版とそっくりのPDFファイルでまるまる一冊を無期限で入手できる場合でも、デジタル形式にすることで、できるだけ多くの人に試しに読んでもらい、その中から買ってくれる人が現れることを期待する方法をとっている。
自分でもデジタル書籍の展開をしたいと考えているが、これらの方法論は参考になります。
オライリー・メディアの設立者のティム・オライリーが言うには、「作家の敵は著作権侵害ではなく、世に知られないでいること」なのだ。フリーはもっとも低コストでもっとも多くの人に作品を届けられる方法であり、試し読みが役目を果たすと、「上級」版を購入する人が出てくるだろう。本をアトムの形で持ちたいと望みつづけるかぎり、読者は紙の本に代金を支払いつづけるのだ。
これはかなり的を得ているように思います。素人アーティストとしては参考になります。
啓発された利己主義こそ、人間のもっとも強い力なのだ。人々が無償で何かをするのはほとんどの場合、自分の中に理由があるからだ。それは楽しいからであり、何かを言いたいから、注目を集めたいから自分の考えを広めたいからでありほかにも無数の個人的理由がある。
深い内容だと思います。
不正コピーは事実上、中国のすべての産業に及んでいる。それにはこの国の発展状況や法制度も関係しているし、さらに儒教では、他人の作品をまねることは敬意の表明であり、教育の基本になるという知的財産に対する考え方がある(アメリカで学ぶ中国人留学生に模倣の何が悪いのかを説明するのに苦労することは多い。師のまねをすることは、中国では学ぶことの中心にあるからだ)。
慣習の違いというのは大きいですね。どの慣習が正しいかは誰も判断できない。とすると、コンセンサスをとっていくことが重要になる。コンセンサスをとることになるのだから、一方的な押し付けはよくない。相手側の利益も考え、相手側の立場を尊重していくことが重要。中国の知財への考え方への対処はこのあたりを前提にしていかないと駄目だと思います。
「読者が何章か読む可能性があればかならずあとでその本を買てくれると私は思いました」。コエーリョはインタビューでこう語っている。「作者の究極の目的は読んでもらうことです。お金はそのあとです」
この考え方は、Googleにも通じているような気がします。
フリーは魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけでは金持ちにはなれない。フリーによって得た評判や注目を、どのように金銭に変えるかを創造的に考えなければならない。その答えはひとりずつ違うはずだし、プロジェクトごとに違うはずだ。その答えがまったく通用しないときもあるだろう。それは人生そのものとまったく同じだ。ただひとつわからないのは、失敗の原因が自分の貧困な想像力や失敗への恐れにあるのに、それをフリーのせいにする人がいることだ。
フリーだけではダメで、フリーを生かすも殺すも、自分の創造力次第なんですね。
最後に「無料のルール」と目次を掲載しておきます。
良書ですので、ぜひ、実際に手にとって読んでみてください。
■無料のルール
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう
■目次
プロローグ
第1章 フリーの誕生
無料とは何か?
第2章 「フリー」入門
-- 非常に誤解されている言葉の早わかり講座
第3章 フリーの歴史
-- ゼロ、ランチ、資本主義の敵
第4章 フリーの心理学
-- 気分はいいけど、よすぎないか?
デジタル世界のフリー
第5章 安すぎて気にならない
-- ウェブの教訓=毎年価格が半分になるものは、かならず無料になる
第6章 「情報はフリーになりたがる」
-- デジタル時代を定義づけた言葉の歴史
第7章 フリーと競争する
-- その方法を学ぶのにマイクロソフトは数十年かかったのに、ヤフーは数ヶ月ですんだ
第8章 非収益化
-- グーグルと二一世紀型経済モデルの誕生
第9章 新しいメディアのビジネスモデル
-- 無料メディア自体は新しくない。そのモデルがオンライン上のあらゆるものへと拡大していることが新しいのだ
第10章 無料経済はどのくらいの規模なのか?
-- 小さなものではない
無料経済とフリーの世界
第11章 ゼロの経済学
-- 一世紀前に一蹴された理論がデジタル経済の法則になったわけ
第12章 非貨幣経済
-- 金銭が支配しない場所では、何が支配するのか
第13章 (ときには)ムダもいい
-- 潤沢さの持つ可能性をとことんまで追究するためには、コントロールしないことだ
第14章 フリー・ワールド
-- 中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何が学べるだろうか?
第15章 潤沢さを想像する
-- SFや宗教から、〈ポスト稀少〉社会を考える
第16章 「お金を払わなければ価値のあるものは手に入らない」
-- その他、フリーに対する疑念あれこれ
結び -- 経済危機とフリー
巻末付録(1):無料のルール
-- 潤沢さに根ざした思考法の10原則
巻末付録(2):フリーミアムの戦術
巻末付録(3):フリーを利用した50のビジネスモデル
日本語版解説(小林弘人)
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